120707 初版
MathJaxがあまりにいいので,
調子に乗って書いてみる
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高校で何を数学で学ぶのかについて,私の答えを述べてみる。
この三部作はどれも密接に絡んでいる。
なぜと何をとどうやってとは相互関係がある。
数学は世の中に存在していて,必要なのだから(必要悪ではないぞ),
学ぶ理由がある。
何を学ぶのかも大体決まっていなければ,実践面での説得力がない。
せっかく学ぶのだから,身についてほしいので方法論も述べてみる。
ある人は忍耐力や集中力を学ぶのだという人もいるが,
数学が中心を担っていることを3つあげてみる。
数学とは何かに対する私の答えでもある。
よく,数学的な見方・考え方というのがあるが,
ではそれは何かというのを考えたときに,出てくる答えとはちょっと異なる。
先日の研修で私は生徒に身につけさせたい力として次のことをあげた。
- 数学の美しさを理解できる力
- 物事の本質を見抜く力
- 解を予想できる力
- 解への道筋を見渡せる力
- 解への道筋を論理的に説明・表現する力
- 正解に辿り着くためのやり遂げる力すなわち計算力
目の前にいる対象生徒が違えば,もちろん違ってくるが,
今は,このようなことを考えている。
よくわからないという声もあったようなので,
解説してみる。
数学というものについても,つけさせたい力にしても,順番はない。
数学的な事象を知るということは,やはり学ぶ事柄だろう。
例えば,三角形の2辺の長さの和は他の一辺より長いとか,
相加平均と相乗平均の大小関係とか,
周の長さが一定の長方形のうち面積が最大となるのは正方形であるとか,
そんな豆知識はないよりあったほうがよい。
次に,えっ? なぜ? なんていう好奇心,感動が出てくると数学に興味がわいてくる。
例えば,
ユークリッドの互除法をあげてみよう。
H24年の教育課程から高校数学に入ってきた。
これを授業で取り上げるとき,
2つの自然数\(a\), \(b\)があって,\(a>b\)とします。
\(a_1=a\), \(b_1=b\)として,\(a_{n}\)を\(b_{n}\)で割った余りを\(r_n\)とします。
\(a_{n+1}=b_n\), \(b_{n+1}=r_n\)として割り進め,
\(r_n=0\)となったときの\(b_n\)が\(a\), \(b\)の最大公約数です。
と,先に知識を提示しても,それが感動を伴うのであれば,
実験を先にしたものと同じ効果が得られると思う。
問題はこの教材から何を学ばせたいのかということを考えて授業をするかどうかである。
これで,最大公約数が計算できるという知識と,
ちゃんと計算できるという実行力,
なんでこれでいいのという疑問と感動,
なるほどだからなのかという証明,
周期性をキーワードにおいた
約数と倍数の本質,
逐次操作に注目してのアルゴリズム,
対象生徒によって,いろいろな授業展開が考えられる。
余談だが,古来よりひとは周期を大切にしてきた。
私も人生観を話すときに,
- 0歳から6歳 幼児教育
- 6歳から12歳 初等教育
- 12歳から18歳 中等教育
- 18歳から24歳 高等教育
- 24歳から30歳 社会人見習
なんて6年刻みの話とか,
2,3,5,7,11,13,17,19,23なんていう素数の年齢は周期の開始年だから注意が必要だとか言う。
(素数蝉の話も聞いたことがある。)
私も昔は問題解決能力をつける,
とにかく問題を解けるようにしよう,
というのがテーマだった時期もあるが,
やはり,数学は美しいものだと理解できる人がいてほしいものである。
私が担当教員になると,
2年,3年からぐっと数学の成績が伸びる生徒が多いが,
たぶんそれは,1年のときに悩んで自分で考えることを経験してもらったことと,
本当に基本的なことしか教えなかったので,
重箱の隅をつつくような狭い範囲の出題では,実力を発揮できなかったのだと思う。
1,2年のときに自分で自分を高めることができるようにならないと,
3年ではつらいだろうなと思う。
本来は中学生のうちにその能力が付いているもののみが,
中心校に進学するべきなのだと思うが,
少子化と過疎化とテクニックにより,そんな時代ではなくなったようだ。
例えば,数列でも学ばせたいことは山ほどある。
大きなものは,
規則性や変化を捉えることや,逐次的・帰納的考えや,計算力をつけさせたいというのもある。
漸化式は解法だけ教えたらつまらないのだが,
その帰納的考えや,一般項を予想する力というのも身につけさせたいと
テーマを変えるとそれはそれでいい教材である。
(拙者の小部屋数列のページを参考)
よくいわれる数学の四分野の区分けは現代でも意味があると思う。
- 代数 ものへの作用を主眼においた理論
- 幾何 ものの様子に主眼においた理論
- 解析 ものの変化に主眼においた理論
- 確率・統計 不確実な事象を捉えることに主眼においた理論
そして,本質や構造をとらえて,モデル化して,
そこから純粋なロジックや形式的な計算を使って,
現象の結果を得たりシミュレーションするというのが,
応用としての数学である。
無味乾燥さが数学の特質でもある。
現象や問題の中から本質を見極めることは学んでほしいことであるし,
一旦定式化したら,そこから得られることを間違いなく導く計算力も,
数学としては大切な力である。
そして,私も文章を書くのは結構好きであるが,
これは,理系とか文系とか言わない。
何かイイタイコトがあれば,
それを相手に伝えるために,
どう組み立てて表現すればよいかという方法を知らなければならない。
そこにも広い意味で数学は寄与しているはずである。