3次方程式 ふたたび
彼らが I 高校で計算していたことをもとに,
ガロア風の3次方程式の解法を展開してみます。
彼らが学んだことを使って,私が独自に解法を再発見してみます。
「再発見」は,
高校生やその周囲にいる私たちが課題研究をする,
指導するうえでのキーワードだと感じています。
3次方程式の根を
x1, x2, x3
として,
y1, y2
を,
\(y_1={x_1}^2x_2+{x_2}^2x_3+{x_3}^2x_1\),
\(y_2={x_1}^2x_3+{x_2}^2x_1+{x_3}^2x_2\)
とおきます。
y1, y2 それぞれは
A3 = C3 = {id, (1 2 3), (1 3 2)} で不変なことに
注意してください。
でも,例えば y1 は (2 3) によって,
y2 に移りますから,S3 では不変ではありません。
\(x_1+x_2+x_3=a_1\),
\(x_1x_2+x_2x_3+x_3x_1=a_2\),
\(x_1x_2x_3=a_3\)
とおきます。根と係数の関係から x1 たちは
3次方程式 \(x^3-a_1x^2+a_2x-a_3=0\) の根になります。
\(b_1=y_1+y_2\),
\(b_2=y_1y_2\) を考えます。
b1, b2 はそれぞれ展開すると
xi の S3 の作用で不変になります。
つまり,基本対称式 a1 たちで
書くことができます。
実際,
\(b_1=a_1a_2-3a_3\),
\(b_2=9{a_3}^2+{a_1}^3a_3-6a_1a_2a_3+{a_2}^3\)
結構しんどい計算です。
対称式の計算が楽しくなります。
さて,\(x^3-3x-1=0\) を解いてみます。
\((a_1,a_2,a_3)=(0,-3,1)\)
\((b_1,b_2)=(-3,-18)\)
すなわち,
y1, y2 は,
\(y^2+3y-18=0\) の根になります。
これは,
-6, 3 という有理数(!)の根をもちます。
このことは,この方程式のガロア群が 3次巡回群だと
いうことを物語っています。
この先の方法を1つ紹介しましょう。
ラグランジュ・リゾルベントを使います。(だったら最初から(笑))
\(3\alpha_1=x_1+x_2+x_3\)
\(3\alpha_2=x_1+x_2\omega+x_3\omega^2\)
\(3\alpha_3=x_1+x_2\omega^2+x_3\omega\)
とおいて,ω や ω
2 などを上手に掛けてあげると,
\(x_1=\alpha_1+\alpha_2+\alpha_3\)
\(x_2=\alpha_1+\alpha_2\omega^2+\alpha_3\omega\)
\(x_3=\alpha_1+\alpha_2\omega+\alpha_3\omega^2\)
となります。
ここで ω はもちろん1の原始3乗根です。
α
1 たちを求めてみましょう。
ちょっと手を動かすと,
\(y_1={x_1}^2x_2+{x_2}^2x_3+{x_3}^2x_1\)
\(=3({\alpha_1}^3+{\alpha_2}^3\omega^2+{\alpha_3}^3\omega)\)
\(y_2={x_1}^2x_3+{x_2}^2x_1+{x_3}^2x_2\)
\(=3({\alpha_1}^3+{\alpha_2}^3\omega+{\alpha_3}^3\omega^2)\)
である(!)ことが分かります。
\(x_1+x_2+x_3=3\alpha_1\)
ですから,今の場合,
\(\alpha_1=0\),
\({\alpha_2}^3\omega^2+{\alpha_3}^3\omega=-2\),
\({\alpha_2}^3\omega+{\alpha_3}^3\omega^2=1\)
ここで,ちょっと便利な公式
\(\dfrac{x_1+y_1\omega}{x_2+y_2\omega}=a+b\omega\)
とすると,
\(a=\dfrac{x_1x_2+y_1y_2-x_1y_2}{{x_2}^2+{y_2}^2-x_2y_2}\),
\(b=\dfrac{-x_1y_2+x_2y_1}{{x_2}^2+{y_2}^2-x_2y_2}\)
を使うと,
\({\alpha_2}^3=-\omega\), \({\alpha_3}^3=-\omega^2\)
となります。
すなわち,ζ を 1 の原始18乗根として,
3つの根は
\(\zeta+\zeta^{-1}\),
\(\zeta^5+\zeta^{-5}\),
\(\zeta^7+\zeta^{-7}\)
となるのです。