実は,数学の学校設定科目導入は私には先に結論ありきで,
あとは,どのように理由をつけるかです。
申請時の私の作文は次のとおりです。
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定の研究開発目標の一つに,数学分野における教育課程と指導方法,教材開発および授業実践事例集録を掲げた。
- 従前よりSSH指定校での研究開発が反映された新学習指導要領における理数数学の指導方針を踏まえ,科学技術人材を育成するために,将来を期待されている高い資質を持った本校の生徒を対象にして,研究指定校として相応しい深化した数学教育を実践したい。
- 事象を定式化,数理化することによって,自然科学の根幹を成す,現象から理論を構築するモデルとしての数学を学ぶことのできる教材,指導方法を開発したい
- 理科との連携をより重視した理数教育の一体感を持たせる指導順序の研究と教材開発を行いたい。
- 講演会等だけでなく,日常の授業を通じて,論証力・表現力を養う教育課程の開発を行いたい。
私は 数学 という言葉にとても愛着があります。
数学という名前を教科,科目から外すのは
本当は適当ではないと思っています。
しかし,数理科学という言葉は,長いけど響きがいい。
そして,数学が理科を包んでいる。
改革するために旗印がほしかったのです。
そこで,奈良女子大学附属中等教育学校で使われていた
数理科学 という語を科目名にすることにしました。
数理には二つの意味合いを込めています。
一つは,数のことわり です。
かず だけしかないけど,
かたち を含めてその性質を研究する。
もう一つは,現象の数理を探る
現象を数学的にとらえる。
この学校設定科目を実施するにあたっての私たちの心構えを挙げます。
- 毎日の授業の中で,現象を定式化,数理化する態度を養う
- 教材の取り扱う内容と順序を研究する
- 問題解決の足跡を辿る数学史を絡める
- 問題解決型の導入と展開を目指す
- 自然科学の現象を定式化,数理化,モデル化する
科目を設計した私がこのカリキュラムで
理数科を対象に授業を行っているのは,
今年が最初なんです。
いつも同じ部屋にいる同僚でも,
思想を共有するのは難しく,
数学の授業は他の教科と同等あるいはそれ以上に
授業者の個性が出るので,無理なことかもしれません。
人によって,どうしても変わってきてしまうのが課題で,
冊子になっている教科書が,生徒,教員ともに必要だと感じています。