教科書以外でちゃんと教えたいことがあるのなら, プリントを用意して, それと同じものをスクリーンに用意したほうが いいと思っています。 入試問題の解説でもそんな手を使ったことがあります。 教科書や傍用問題集の問題の正解例を黒板に書くのが面倒なときは, 紙に鉛筆で書いて,それをスキャナで読んで PDFとして 投影することがあります。 鉛筆の太さはちょうどよく(経験上,紙の面積はA5くらいの大きさがいいです) スクリーンに投影しても読みやすいと感じています。 ディジタルとして残る(画像ですが)ことも利点です。 生徒が写すのを防ぐために, 公表するような正解例としては書かないようにしています。 私はスケッチと呼んでいますが,特に証明問題では概略だけで十分です。 教科書の補足,自分で書いたものでも, 生徒と対話する際に追加したいことが出てきます。 そのときは,やはり,黒板とチョークなのです。
 プロジェクタは常設ではありません。 できるだけ無理なく授業を進めるために, 冒頭の10分間に傍用問題集から2問程度を 解かせます。 時間になったら,回収して添削,次回返却します。 解かせている間,準備をしたり, 前回の問題の添削返却と手書きの正解例を配布したり, 机間巡視をしたりしています。
 授業改善というと, 数学的な性質・定理を 如何にわかりやすく生徒に伝えることに主眼点があるような気がしています。 ICT の活用も わかりやすく伝える 数学の概念形成の助けとなる  ことをテーマにしている実践例が多いと感じています。 さらに,上のステージに行くべきなのではないかと思っています。 ICT を活用するにしても, 授業改善はどうやれば問題が解けるようになるのかという, 問題解決の姿勢・態度を身に着けさせることをテーマにしています。
 基本は教科書のPDFファイルを投影して解説します。 理論を構築する部分は理想を言えば, 問題が先にあって,その解決の流れを整理して 必要事項を再定義する 定理として性質をまとめる  という流れにしたいのですが, 必ずしも教科書はそうはなっていません。 その点は大きく不満なのですが, 教科書は生徒がもっとも頼りにするものですので, 仕方がない。 だから,教えやすい,理想とする教科書を作りたいと考えています。
 ここで,もっとも重要なのは, 生徒がみているものと同じものがスクリーンに投影されているという点です。 先にも述べましたが, 問題演習や必要に応じた教科書以外の解説でも, プリントを配って,同じものを投影する。 (プリントは紛失するので,やっぱり冊子がいいんですよね。 ただ,ゆくゆくはタブレットあるいはクラウドになるのかもしれません。)
 例題は,獲得した知恵の応用です。 生徒に繰り返し説いているのですが, 問題は 設定と要求 が読み取れれば解決したも同然。 黒板に 設定と要求 を整理して書きます。 解法の流れは,仕方ないできるだけ教科書に沿います。 練習問題を解かせて確認します。 ここまで,プロジェクタを使わないより相当スムーズに進みます。 浮いた時間は,少し難易度の高い問題を生徒に考えさせます。
 生徒が考える時間は,プロジェクタを使うことによって, かなり確保することができています。 黒板を写すという作業がほとんどありません。 私が,問題の解説をする際にも これはメモだよ と言って, 自分の考えをまとめてごらん と言い放って終わります。
 生徒が考える時間を増やすことによって, テストの点数もかなり上がります。 たった,これだけを意識して授業するだけです。 ICTを活用して概念を分かりやすく説明するのではなく, 考える時間を増やしているのです。 体育の教育実習を見学したことがあります。 指導教官は,生徒が動かなくては授業の価値がない というような ことを言っていました。 数学も似たようなもので, 生徒が考えなくては授業の価値がない。
 課題は,生徒の発表する時間があまりとれないことにあります。 生徒の発表やグループ活動などの場面で, プロジェクタを(なるべく自然な形で)生かした方法を考えたいと思います。
 テクノロジーの進化はどうなるかわかりませんが, 私としては,一畳くらいのござのようなもので, 液晶だか有機ELだかで,丸めて持っていって 黒板に張れる。 それが,ケーブル一本で(ワイヤレスでもいいですが) コンピュータとつながっている ものがほしいです。
 昨年は MacBook を使っていました。 いまは,iPad です。 自炊したものでも PDF に書き込みたくなりましたので, MetaMoji Note使っています。 PDFに書き込みやすい道具や, 生徒の書いたものを手軽に共有できる手段もほしいです。

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