漸化式の解法
200820 初版 200820 更新
年を追うごとに,知識・技能がないと解けないような問題は少なくなってきている気がしています。
問題に対して,多角的な見方・多様な考え方ができる,してきたかを問う傾向がある気がしています。
もちろん,数学でも一定の知識・技能 や かた は必要です。
それは,教科書がベースとなっています。
漸化式のある問題は,漸化式を解け というよりも,
漸化式を見つけるもの が多い気がしています。
そして,漸化式を見つけたら教科書にあるくらいの知識で解けるものがほとんどです。
教科書に解法がないものはふつう誘導がついている。
漸化式で教科書が要求する知識は
1. \(a_n\) と \(a_{n+1}\) の関係から 自然な見方で \(a_1\) と \(a_{n}\) の関係がわかるもの
具体例としては \(a_{n+1}-a_n=3\) であれば, \(a_{n}=a_1+3(n-1)\)
2. \(a_n\) と \(a_{n+1}\) の関係が n についての 単純な式 で表されるもの
具体例としては \(a_{n+1}=a_n+2n\) であれば,\(a_n=a_1+n(n-1)\)
3. 具体例として \(a_{n+1}=3a_n+2\) であれば,
\(a_{n}=3^{n-1}(a_1+1)-1\)
3. はかなり違和感があって,これはある種 公式のようなものです。
例えとしてどうかと思われるかもしれませんが,
方程式には,3次方程式,4次方程式の解の公式があるけど,
それは高校ではやらない。
2次方程式だけは中学校(義務教育)で習う。
似ている感じがします。
3. ぐらいを知識としてもっていないと,
せっかく見つけた漸化式を解いて,
答えを出すのに余計な労力を使うからかなと思っています。
先に,質問の後段について考えを述べます。
\(a_{n+2}-5a_{n+1}+6a_{n}=0\) のような漸化式を解くためには,
知識がないと
鋭い見方・考え方だけでは難しいと考えます。
では,教科書の本文に載せる価値のある知識かといえば,
そうは判断していないようです。
私もそう思います。
まさに,発展的な内容で,
標準的な上述の3つがわかっていて,少し複雑なものでも
誘導に乗れるような読解力があるのでしたら,
次はいわゆる3項間漸化式の解法を覚えてもいいと思います。
授業で取り扱うとみんなできなければならないと思われるので,
自習が望ましいでしょう。
本題の 漸化式 \(a_{n+1}=3a_n+2n-4\) … ① を解くことについてですが,
これは,知識ではなくて,
数列の式を取り扱う 見方・考え方 があればなんとかなると思います。
微妙ですが。
そのような見方・考え方の経験をしてほしいということから,
この問題集に取り上げられているのではないでしょうか。
この問題の学習価値だと思います。
繰り返しですが,\(a_{n+1}=3a_n+2\) であれば,教科書に載っている知識です。
右辺の 2n-4 の n がなくならないか,という発想をして,
項の値の関係式(漸化式) の n は任意だから
\(a_{n+1}=3a_n+2n-4\) … ① の n に n+1 を代入して
\(a_{n+2}=3a_{n+1}+2(n+1)-4\) … ②
②式 から ①式を引けば右辺から,n がなくなる。
代わりに 3項間 になってしまうが,それは置き換えで3. と 2. に帰着できる。
という,解答例では別解に相当する方が,自然だと思います。
解答例では 本筋としているのは,うまいですが,多少技巧的な感じがしています。
あくまで,個人の感想ですが。
今の時期の学習としては,
正解例から新しい知識や見方・考え方を学ぶことも必要な場面があるでしょう。
ちょうど漸化式の解法の学習法がいい例なのですが,
ほとんど出題されないようなマニアックな漸化式の解法を
参考書で取り上げられている順に覚えていくよりも,
このように,問題の中で,
編集者や私たちがこれは今時も知っていた方がよいな と判断する
という解法を身に着けていくという学習方法のほうがよいと思います。
今でも,知らないと解けないという問題も確かにありますが,
それは,普通の受験生なら知っているでしょ という程度の知識です。
難関大といわれる大学ほど,知っている人が少数の知識を問うよりも,
こんな見方・考え方できるよね という経験をたずねているような問題が多いです。
共通テストもそうなるでしょう。