プロジェクタは常設ではありません。 できるだけ無理なく授業を進めるために, 冒頭の10分間に傍用問題集から2問程度を 解かせます。 時間になったら,回収して添削して次回返却します。 解かせている間,準備をしたり, 前回の問題の添削返却と手書きの正解例を配布したり, 机間巡視をしたりしています。
 問題演習はとても大切ですよね。 獲得した性質や知恵をどう使うかを考えることは, 問題解決の姿勢を学ぶ上でも点数をとるという点でも 意味はあります。 数学自体が,自己発展していく学問ですよね。 問題があって,それにアタックしていくために 新たな手法が開発されて, それが整理,理論化されて, それを考察していくと新たな問題が生まれて,そして…。 5次以上の方程式は根号では解けない なんていうのはいい例ですし, フェルマーの最終定理が楕円曲線とモジュラー曲線の理論に結び付けて解決されたのも 一つです。 双子素数の問題が解決できないのは, まだ,数学がそこまで到達していないからだという話は, 興味をそそることです。 授業改善というと, 数学の内容,具体的には数学的な現象を 如何にわかりやすく生徒に伝えることに主眼点があるような気がしています。 それだけでは不十分で,さらに, 上のステージに行くべきなのではないかと思っています。 どうやれば問題が解けるようになるのかという, 問題解決の姿勢・態度を身に着けさせたいものです。 そんな授業改善の研修をしていくべきだと思っています。
 基本は教科書のPDFファイルを投影して解説します。 理論を構築する部分は理想を言えば, 問題が先にあって,その解決の流れを整理して 必要事項を再定義する 定理として性質をまとめる  という流れにしたいのですが, 必ずしも教科書はそうはなっていません。 その点は大きく不満なのですが, 教科書は生徒がもっとも頼りにするものですので, 仕方がない。 だから,教えやすい,理想とする教科書を作りたいと考えています。
 ここで,もっとも重要なのは, 生徒がみているものと同じものがスクリーンに投影されているという点です。 先にも述べましたが, 問題演習や必要に応じた教科書以外の解説でも, プリントを配って,同じものを投影する。 (プリントは紛失するので,やっぱり冊子がいいんですよね。 ただ,ゆくゆくはタブレットあるいはクラウドになるのかもしれません。)
 例題は,獲得した知恵の応用です。 問題は,設定と要求に分析されます。 生徒に繰り返し説いているのですが, 問題は設定と要求が読み取れれば解決したも同然。 黒板に設定と要求を整理して書きます。 解法の流れは,仕方ないできるだけ教科書に沿います。 練習問題を解かせて確認します。 ここまで,プロジェクタを使わないより相当スムーズに進みます。 浮いた時間は,節末問題など生徒に考えさせます。
 私の授業方法の課題は,生徒が発表する場面が少ないことにあります。 生徒が考える時間は,プロジェクタを使うことによって, かなり確保することができています。 黒板を写すという作業がほとんどありません。 私が,問題の解説をする際にも これはメモだよ と言って, 自分の考えをまとめてごらん と言い放って終わります。
 生徒が考える時間を増やすことによって, テストの点数もかなり上がります。 たった,これだけを意識して授業するだけです。 ICTを活用して概念を分かりやすく説明するのではなく, 考える時間を増やしているのです。 体育の教育実習を見学したことがあります。 指導教官は,生徒が動かなくては授業の価値がない というような ことを言っていました。 数学も同じだと思います。 生徒が考えなくては授業の価値がない。

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