格子点虚数のn乗
221122 初版 221122 更新
面白い問題をもらいました。
\(i\) を 虚数単位として、\((3+i)^n\) が実数となるような自然数 n は存在するか?
少し実験すると気が付くのですが、
自然数 a, b で\((a+bi)^n\) が実数となる n が存在するような虚数は a = b のときしかないのではないか?
と、予想されます。 実際、それは成り立ちます。 そこそこ、有名な問題でたぶん大昔から分かっていたことでしょう。
整数 a, b で \(a+bi\) を格子点複素数と呼ぶことにします。 いま、実数と純虚数は除くことにします。 その場合単に格子点虚数と呼ぶことにします。(純虚数は除きますが)。
元の問題は、偏角を考えると、
\(\tan\theta=\dfrac{1}{3}\) のとき、 \(\tan n\theta=0\) となる n があるかと言い換えられます。
ここでは、この方向で考えてみます。
\(\tan\theta=\dfrac{1}{3}\), \(\tan\alpha=x\) のとき、
\(\tan(\theta+\alpha)=\dfrac{x+\dfrac{1}{3}}{1-\dfrac{1}{3}x} =\dfrac{3x+1}{-x+3}\) これを繰り返し使います。
いま、\(\tan n\theta\) は有理数ですから、 整数 \(x_n\), \(y_n\) を用いて、\(\tan n\theta=\dfrac{x_n}{y_n}\) と表すことにします。
数列\(\{x_n\}\), \(\{y_n\}\) が、次の漸化式で定まります。
\((x_0, y_0)=(0,1)\), \(x_{n+1}=3x_n+y_n\), \(y_{n+1}=-x_n+3y_n\)
行列で表せば、
\( A=\left( \begin{array}{cc} 3 & 1\cr -1 & 3\cr \end{array} \right)\) とおいて、 \( \left( \begin{array}{c} x_{n+1}\cr y_{n+1}\cr \end{array} \right) = A \left( \begin{array}{c} x_{n}\cr y_{n}\cr \end{array} \right) \)
つまり、 \( \left( \begin{array}{c} x_{n}\cr y_{n}\cr \end{array} \right) = A^n \left( \begin{array}{c} 0\cr 1\cr \end{array} \right) \)
すなわち、xn は An の (1, 2)成分です。
昔々、ハミルトン・ケーリーの定理はおおはやりでした。
\(A^2=6A-10E\) (Eは単位行列)
これを使います。
\(A^n=a_nA+b_nE\) とすると、
\(A^{n+1}=(a_nA+b_nE)A\) \(=a_nA^2+b_nA\) \(=a_n(6A-10E)+b_nA\) \(=(6a_n+b_n)A-10a_nE\)
これより、 数列\(\{a_n\}\), \(\{b_n\}\) が、次の漸化式で定まります。
\((a_1,b_1)=(1,0)\), \(a_{n+1}=6a_n+b_n\), \(b_{n+1}=-10a_n\)
成分を10を法としてみると、 An と 6n-1A は合同であることが分かります。
以上より、
2 以上の n について、 xn を 10 で割った余りは常に6 になるので、
xn = 0 となるような n はありません。
一般化してみましょう。
一般化してみる