ベクトルは図形の問題を解く道具である。
そう思っていると、教科書にはないがよく用いられる考えがある。
点 A (1, 2, 4) を通り,
ベクトル \(\vec{n}=(-3,1,2)\) に垂直な平面を α とする。
点 P (-2, 1, 7) の α に関する対称な点 R の座標を求めよう。
線分PR の中点を M とすると,
点 M は 平面 α 上にあり, … ①
PM は α に垂直である。(\(\vec{n}\) に平行である。) … ②
M は P から α に下ろした垂線の足という。
手法1
正射影の考えを使う。
② より,
\(\overrightarrow{\rm PM}=t\vec{n}\) なる t がある。
t を 求めることは,
\(\vec{n}\) の大きさ と PM の長さ との比を求めることと同じ
直角三角形PAM に注目する。
∠ APM = θ とおく。
PM = PA cos θ
ところで,\(\cos\theta = \dfrac{\left|\overrightarrow{\rm PA}\cdot\vec{n}\right|}{{\rm PA}\cdot\left|\vec{n}\right|}\)
ゆえに,\({\rm PM}=\dfrac{\left|\overrightarrow{\rm PA}\cdot\vec{n}\right|}{\left|\vec{n}\right|}\) … ③
ここで,\(\overrightarrow{\rm PA}=(3, 1, -3)\),
\(\overrightarrow{\rm PA}\cdot \vec{n}=-14\),
\(\left|\vec{n}\right|=\sqrt{14}\)
よって, \({\rm PM}=\sqrt{14}\)
\(\overrightarrow{\rm PA}\cdot \vec{n}< 0\) より t = -1
\(\overrightarrow{\rm PR}=2t \vec{n}\) だから
R(4, -1, 3)
③ が
正射影の考えである。
平面 α と 点 P の距離,
言い換えると α を底面にした P の高さを求めている。
手法2
手法1とおなじことだが,
① より,
\(\overrightarrow{\rm AM}\cdot\vec{n}=0\) … ④
② より,
\(\overrightarrow{\rm PM}=t\vec{n}\) なる t がある。… ⑤
④ より,
\((\overrightarrow{\rm PM}-\overrightarrow{\rm PA})\cdot\vec{n}=0\) …⑥
⑤ を用いて,
\(t=\dfrac{\overrightarrow{\rm PA}\cdot\vec{n}}{\left|\vec{n}\right|^2}=-1\)
⑥ の変形が決め手である。
手法3
多少古典的である。
M (x, y, z) とすると,
x, y, z は
-3(x-1) + (y-2) + 2(z-4) = 0 を満たす。 … ⑦
これは, ① の言い換えであり,
平面の方程式といわれるものである。
④ を成分で書いているに過ぎない。
さて次に,② より,
\(\overrightarrow{\rm PM}=t\vec{n}\) なる t があるから,
(x, y, z) = (-3t-2, t+1, 2t+7) とかける。… ⑧
⑦ ⑧ より
-3(-3t-3) + (t-1) + 2(2t+3) = 0
9t+9 + t-1 + 4t+6 = 0
これを解いて t = -1
出てくる値を追いかけると分かるが,どれも同じことをやっている。
私たちの世代は 手法3 で解いたものだが,昭和の解法のような気がしている。
絶対座標より相対量を使ったほうがいい気がしている。