160521 初版 160521 更新
任意の
有理数 を
小数展開 すると,
どんな n進法表示 であれ,有限小数か循環小数になります。
循環しない小数を考えるとそれは有理数ではありません。
そのような数を無理数と呼んでいます。
有理数の集合 \(\mathbb{Q}\) と無理数の
集合には共通部分はありませんので,互いに補集合と見ることができます。
有理数の集合と無理数の集合の和集合を 実数 と呼んでいます。
実数の集合はよく \(\mathbb{R}\) で表されます。
したがって,無理数の集合は \(\overline{\mathbb{Q}}\) と書くことができます。
任意の2つの有理数の間には必ず有理数が存在します。
次のような操作を考えてみましょう。
0 と 1 の中央に
r1 = \(\dfrac{1}{2}\) が存在します。
その r1 を基準にして左か右を選びます。
例えば,右を選んだとします。
次に, r1 と 1 の中央に
r2 = \(\dfrac{3}{4}\) が存在します。
その r2 を基準にして左か右を選びます。
例えば,右を選んだとします。
次に, r2 と 1 の中央に
r3 = \(\dfrac{7}{8}\) が存在します。
その r3 を基準にして左か右を選びます。
例えば,右を選んだとします。
このような操作は左を選んだことを0 右は1 として,
0.111… のように数を並べると,これはある数の2進法表示になります。
左を選ぶか右を選ぶかの選択 を有限で止めれば,
その数は有理数を表します。
この選択が無限の操作であったとしても繰り返しで作られるならば,有理数になります。
特に,ずっと右を選択すると,限りなく 1 に近づいていきます。
ずっと左を選択すると,限りなく 0 に近づいていきます。
無限の操作に繰り返しがなかったら,どうなるでしょうか。
決して,0 と 1 の間からはみ出すことはなく,
しかも,有理数ではない数 すなわち ある無理数 に限りなく近づいていきます。
0 と 1 の間には有理数はぎっしりと稠密にありますが,
それだけでは隙間があるのです。
隙間を埋めるのが無理数の存在で,0 と 1 の間には実数ならば
ぴったりと連続的に数が詰まっています
実数の概念には 極限 の考えが必要になってきます。
0 と 1 の間には有理数だけでは隙間があるのです。
単純に右か左かで決められますから,実数には大小関係が存在します。
この例は,数列 {an} に対して,
無限級数の和 \(\displaystyle{\sum_{k=1}^\infty a_k\cdot q^{-k}}\) を考えていることになります。
別の無限級数の和で無理数になる有名な例を挙げます。
\(1-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{5}-\dfrac{1}{7}+\dfrac{1}{9}-\cdots\) (ライプニッツ級数)は有限で止めれば
有理数ですが,無限に続けると極限値は\(\dfrac{\pi}{4}\) です。
\(1+1+\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{6}+\dfrac{1}{24}+\dfrac{1}{120}+\cdots\) は有限で止めれば
有理数ですが,無限に続けると極限値は \(e\) (ネイピア数) です。
\(1-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{5}-\cdots\) (メルカトル級数)は有限で止めれば
有理数ですが,無限に続けると極限値は log 2 です。これも無理数です。