いよいよ解いてみよう
時間を競う人はどのようにやるかは別にして,
解法を考えてみましょう。
スクランブルされた状態から
第1段階 コーナーキューブを初期の位置に置く。
第2段階 コーナーキューブの向きをそろえる。
この2段階で解くことにします。
たぶん,時間を競う人はもっとたくさん手を知っていて,
スクランブルされた状態から最短の回数で初期状態にするのだと思います。
この2段階で解決するときの手法は3つの方法で十分です。
その手法とどうやって見つけるかを説明します。
第1段階 の 1
第1段階の最初は,コーナーキューブを下段と上段に分けることです。
下段には か行のキューブが,
上段には あ行のキューブが そろうようにするのです。
実物ではどれがあ行でどれがか行かはすぐにはわかりませんので,
実際には下面の黄をそろえて,加えて側面の下段を適切な色にします。
そのためには,次の 図 1 を 図 2 の状態にする方法を身につけていなくてはいけません。
図 1 下段 かきく までそろっている
図 2 下段 かきくけ となる
答えはわかりますか。
ここが一番難しくて,なおかつルービックキューブの操作の基本です。
これ以外はほぼ暗記なのですが,ここは基本的な考えの部分です。
答えは,この図で言うと
U'L'UL です。わかりますか。
実物を手にとってやってみて身につけた方が実用的だと思います。
ただ,このように記号で表現できることは,そのうちできてほしい力です。
私たちは言語を通してしか思考できないからです。
数学は,言語活動の大きな役割を担っています。
取り違えの起こらない定義と,飛躍のない推論には
言語や記号(言語を省略したもの)が欠かせません。
コーナーキューブの移動手段をみつける
コーナーキューブの移動手段はどうやって見つけるのでしょうか。
これが,今日の私の話の主題です。
群 の節でみたように,例えば RU と UR は同じ結果をもたらしません。
これを,R と U は非可換である といいました。
群の作用を調べるために,
共役と交換子というものをよく取り扱います。
図1 はヒントになっています。
Uに対して,R'UR を U の R による共役といいます。
もしも,U と R が可換であれば,これは U に他なりません。
非可換であるがゆえに,U ではない R の味の入った何かちょっといい感じの作用をしてくれます。
表 1 から 5 をみると,次のことがわかります。
表 6 R'UR による置換
O |
あ |
い |
う |
え |
か |
き |
く |
け |
R'UR |
き |
え |
う |
あ |
か |
い |
く |
け |
8つあるコーナーキューブのうち、できるだけ多くを動かさない手を考えます。
この手は、4つのキューブを動かして、4つのキューブは不動です。
置換は必ず巡回表記を持ちます。
R'URによって起こる置換は、動いたキューブだけの動きを追うと
あ → き → い → え ( → あ)
と移っています。
R'UR による置換の後、D
2R'DR と操作すると、
あ のキューブも 上面に来ます。
この操作を思いつくのは、ルービックキューブの操作に慣れているからです。
キューブ操作の特徴は,同じ面に属するコーナーキューブ(3x3の場合はエッジキューブといわれるものも)を回転移動させることにあります。
動かしたいものだけ同じ面に乗せる,動かしたくないものは違う面に避ける。
これが操作のコツです。
この逆元を左からかけてあげると、
R'UR の D
2R'DR 共役ができますが、
それは上面だけのコーナーキューブの置換になります。
手 A:
R'D'RD
2R'URD
2R'DR
これは 長さ13 の一連の操作です。
D'F
2R'URF
2D の長さは 9 ですが、
これは、奥の面だけのコーナーキューブの置換になります。
全体をある軸で回転させれば、同じ効果が得られるので、
一つの面が完全にそろった後の操作としては、どちらでもいいことになります。
手 A':
D'F
2R'URF
2D
第1段階 の 2
下段のキューブはそろって,あと上段が図3 の状態だったとしましょう。
このとき,U' を行った後,
R'D'RD
2R'URD
2R'DR
と操作すると (全体を左右軸で90度時計回りに回転させれば,
先ほどの 長さ9 の操作で行うこともできます。)
上段のキューブの位置も初期状態にすることができます。
図 3 上段のキューブを移動させたい
図 4 上段のキューブを移動させたい
図4 のように,あ と い の交換だけしたい というときにも,
この手が使えます。 U
2 を行った後で,
一連の操作をすればよいのです。
どうやって見つけたのだったでしょうか。
共役 という考えを使う,
キューブ操作の基本は面の回転,ということにあります。
そして,テキトーにやっていてもうまくいきません。
言葉を使いながら記録,考察,試行錯誤するのです。