立体の体積の定義
ある空間図形 D がある。
一本の数直線 x 軸を用意する。
数直線上の 点 x における軸を法線とする平面を考え,
立体 D を切り取る断面の面積を S(x) とする。
S(x) のリーマン和の極限が体積である。
計算上は,
線分 a ≦ x ≦ b の各点 xk に対して,
S(xk)wk を積算しているのである。
面積とか体積はしっかり定義されていない。
でも存在している量である。
小・中学校の教科書がよくできていて,
図形に敷き詰めた細かい正方形の「個数」が面積なのだといっている。
私は,これをもって,面積,体積の定義とする。
重みつき和で必要かつ十分である。
パップス・ギュルダンの定理は「回転体」とかいてあるが,
上の話を体積の定義とすると一般の場合も使えて,
とても自然である。
カヴァリエリの原理も面積・体積の定義のもととなっている。
面積で説明しても同じなので,平面図形で説明するが,
空間図形も想像しながら読んでほしい。
長方形ABCDの
AD の中点と BC の中点を結んだ
線分は
ABに垂直に切った線分の長さの集積点と見ることができる。
(重心の定義)
面積は,
この線に沿った
垂直方向の線分の長さの積算とする。
長方形ABCDを
ABに垂直な方向に細かく切って,スライドさせて
平行四辺形を作る。
本当は平行四辺形でなくてもよいのだが,
曲線は線分で近似できるのでこれでよい。
カヴァリエリの原理より面積は等しい。
はみ出した部分を削って埋め,
平行四辺形は
この長方形と等積である。
ABに垂直に切った線分の中点(長さの集積点)は
この線分のように
スライドした分だけ傾く。
この線分に沿って,
その垂直方向の線分の長さを積算する。
前の積分軸の線分より,
この線分は長い。
傾きを θ とすると,sec θ 倍だけ長い。
だから,
PQ の長さを積算してはダメである。
新しい積分軸
に垂直な
線分の長さは,
PQの長さの cos θ 倍である。
新しい積分軸に沿って積算するのは,
その垂直方向の線分の長さである。
長方形ABCDと
この長方形の面積は等しい。
線分で議論しているが,曲線は線分の集まりで近似できるから,
一般的にはこれでよい。すなわち,
平面図形 D がある。
長さ L の曲線 l(t) (a ≦ t ≦ b) があって,
その各点 X における法線が D を切り取る線分を PQ として,
PQの中点が X であるとする。
PQの長さの積算は D の面積と等しい。重みの合計は L である。
例
O を中心とする半径 r の円 C があって,円周上に点 P をとる。
P が円周すべてを動くとき,OP の中点 M は
O を中心とする半径 r/2 の円 C′ を描く。
OP は M における 円 C′ の接線と垂直である。
OP の長さは r であり,M の描く軌跡は πr であるから,
円 C の面積は πr2 である。
これは,半径 r, 中心角 dθ 微小の扇形の面積 \(\dfrac{1}{2}r^2\ d\theta\) の積算ということもできる。
(極座標の求積法)
入試に使ってよいかどうかは,採点者による。