http://goo.gl/MFRFj 130109 初版
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中等教育での数学の最後(通常,数Ⅲと呼ばれる)は,三角関数,指数・対数関数の微積分が目標である。
目標のためにはささやかなふたつの極限
(これと
これ)が必要である。
そのためだけに技巧的な極限の計算をするのはどうかと思う。
むしろ,技巧を離れた極限の意味と,ためになる例をいくつか知っていたほうがいい。
技巧もどこかにまとめようとは思うが(例題ということにしよう),
数Ⅲは例がますます重要である。
気が向いたら説明もつけようと思う。
しばらく表を多用する。
例1:
\(a_n=\dfrac{1}{n}\)
n |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
… |
100 |
一億 |
\(10^{16}\) |
… |
∞ |
\(a_n\) |
1 |
\(\dfrac{1}{2}\) |
\(\dfrac{1}{3}\) |
\(\dfrac{1}{4}\) |
\(\dfrac{1}{5}\) |
↘ |
\(\dfrac{1}{100}\) |
一億分の1 |
\(10^{-16}\) |
↘ |
+ε |
項番号 n を大きくすると \(a_n\)の値はどうなるかというのが,
数列の極限の問題である。
+∞ は,どんな正の数よりも大きいことを表す。単に ∞ と書くことも多い。
-∞ は,どんな負の数よりも小さいことを表す。
+ε は,0より少し大きいことを表す。だが,どんな正の数よりも0に近い。
-ε は,0より少し小さいことを表す。だが,どんな負の数よりも0に近い。
これらの記号は,無限大と無限小と呼ばれる。
考えとしてはおもしろい。
この例では,n を大きくすると,\(a_n\)の値は0に近づく。
このことを,数列\(a_n\)の極限値は 0 である とか
数列\(a_n\)は 0 に収束する という。
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\dfrac{1}{n}=0}\) とか
\(\dfrac{1}{n}\rightarrow 0\) (as \(n\rightarrow\infty\)) とかく。
例2:
\(a_n=\dfrac{2n}{n+1}\)
n |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
… |
100 |
二億くらい |
… |
∞ |
\(a_n\) |
1 |
\(\dfrac{4}{3}\) |
\(\dfrac{6}{4}\) |
\(\dfrac{8}{5}\) |
\(\dfrac{10}{6}\) |
↗ |
\(\dfrac{200}{101}\) |
2より一億分の1小さい |
↗ |
2-ε |
この例では,n を大きくすると,\(a_n\)の値は2に近づく。
このことを,数列\(a_n\)の極限値は 2 である とか
数列\(a_n\)は 2 に収束する という。
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\dfrac{2n}{n+1}=2}\)
説明を試みる。
よくあるのは,分母分子を n で割るもの
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\dfrac{2n}{n+1}}\)
\(=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\dfrac{2}{1+\frac{1}{n}}=2}\)
次のような説明も大切だと思う。
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\dfrac{2n}{n+1}}\)
\(=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\left(2-\dfrac{2}{n+1}\right)=2}\)
いずれも 例1 を誰もが認める事実としている。
\(\dfrac{2n}{n+1}\) は 2 とは 一億分の1くらいに近づけるか,と問うてみる。
不等式\(\left|\dfrac{2n}{n+1}-2\right|<-10^{-8}\) を満たす n はどのくらいか ということだから
\(\left|\dfrac{2n}{n+1}-2\right|=\left|\dfrac{-2}{n+1}\right|=\dfrac{2}{n+1}\)
だから,二億 より大きい n でどやぁ, と答える。
ε - δ 論法と呼ばれるもので,(本siteでは一億問答という)
どんな小さい正の数 ε にも n を \(N=\dfrac{2}{\epsilon}\)より大きくとれば,
\(|a_N-2|=\left|\dfrac{2N}{N+1}-2\right|\)
\(=\dfrac{2}{N+1}=\dfrac{2}{\frac{2}{\epsilon}+1}\)
\(=\dfrac{\epsilon}{1+\frac{\epsilon}{2}} <\epsilon\)
だから,十分大きな n については \(a_n\) は ほとんど 2
例3:
\(a_n=n^2-2n+2\)
n |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
… |
100 |
一万ほど |
… |
∞ |
\(a_n\) |
1 |
2 |
5 |
10 |
17 |
↗ |
9802 |
一億 |
↗ |
+∞ |
この例では,n を大きくすると,\(a_n\)の値はどんな正の数より大きくなる
このことを,数列\(a_n\)は正の無限大に発散するという。
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}(n^2-2n+2)=+\infty}\)
説明を試みる。
よくあるのは,\(n^2\) でくくるもの
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}(n^2-2n+2)}\)
\(=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}n^2\left(1-\dfrac{2}{n}+\dfrac{2}{n^2}\right)=+\infty}\)
次のような説明も大切だと思う。
\(\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}(n^2-2n+2)}\)
\(=\displaystyle{\lim_{n\rightarrow\infty}\left((n-1)^2+1\right)=+\infty}\)
一億問答では,
\(n^2-2n+2\) は 一億を超えるか,と問うてみる。
不等式\(n^2-2n+2 > 10^8\) を満たす n はどのくらいか ということだから
\(n^2-2n+2=(n-1)^2+1\)
だから,二万より大きい(だいぶサバを読んでいる) n なら 十分 (お釣りがくる)と答える。
ε - δ 論法と呼ばれるもので,
どんな大きい正の数 L にも n を \(N=\sqrt{L-1}+1\)より大きくとれば,
\(a_N=N^2-2N+2=(N-1)^2+1=L\)
だから,\(a_n\) は どんな正の数よりも大きくなるような n がある
こんな感じで,例を挙げていく。